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ツール2017の感想

ツール・ド・フランス2017

 

 ダゾーンにジロの放映権を持っていかれた。それを受けて何かしなければと考えたのだろう。今年JSPORTSは世界初となるスタートから表彰までのフル中継に挑んだ。最初の逃げ合戦はいつもハイライトでしか見れない。けれど今年はあっさりと逃げが容認されるケースが多く、フル中継の試みはただ実況と解説の雑談タイムを増やしただけだった。解説2人用意して正解だったね。それでも退屈な時間が多かったけど。1日6時間なんてまともじゃねぇ。でもやりきったんだからすごいよ。JSPORTSがんばった。

 

ツール前

 さて肝心のレース。ここ数年はフルームの時代であり、ツール優勝=打倒フルームを意味している。ところがそのフルームがツール前哨戦といわれるドーフィネでまさかの敗北。調整レースとはいえ、ツール優勝年には必ず勝っているジンクス的にも、あれ?今年のフルーム大丈夫か?と不安になった。

 そのドーフィネではリッチー・ポートの仕上がりが素晴らしかった。優勝こそ逃したものの、個の力においてはフルームと互角という印象を残した。

 

開幕~ドイツ・デュッセルドルフ

 ところがどっこい初日のTTでライバルをぶっちぎるフルームさん。いつも通りじゃんか。ただこの日は雨が降っていた。初日ということもあり他ライバルたちがセーフティに走ったから、という見方もできる。いずれにせよTT能力ではかなわないのは元々想定済みで、勝負はやはり山だ。

 

山では互角

 山といえばスカイトレイン。今年もお元気でした。各チームのエースがヒィヒィいいながらついていく中で3、4人残っている。これではなかなかフルーム狙い撃ちとはいかない。アシストもろともというにも、スリップストリームをきかせたペース走相手では分が悪い。勝負はいつもスカイのアシストが消えかえる最終盤。そしてライバルたちがさぁ!となったときにフルームがぶっちぎるというのがいつものツール。しかし今年のフルームには登りでの爆発力がなかった。かといって遅れるわけでもない。際立って強い選手が不在であるがゆえに終始僅差での戦いになった。

 

勝負所と決着

 レースの支配者はスカイであったが、エースのフルームに際立った爆発力がない。ただいくら競っているとはいえどうしても個々の差がつくステージ、個人TTと激坂が今年の勝負所だった。フルームは激坂では遅れをとったものの、個人TTでは圧勝。2つのTTで2位以下と1分半以上引き離した。これこそフルームの強さだった。唯一あったバッドデイでも失ったのはボーナスタイム込みで20秒ほど。1分半(90秒)の差を埋めるにはそれを4,5回決めなければならない。いやーこれは無理。

 今年のジロはTT巧者のデュムランが制した。山で抜け出すことが難しくなってきた今、本当の山場はTTステージかもしれない。それとボーナスタイムの存在も大きい。ゴール前のスプリント力というのも今後勝負を左右するポイントになる。去年のフルームの下りといい、オールラウンダーの戦いだねホント。そして今年最も最強だったのはフルーム、通算4回目の優勝おめでとうございます。

 

2位ウラン

 54秒差で総合2位に入ったのはなんとウラン。ピークを過ぎた選手だと思って完全にノーマークだったが、まさかの復活。初日TTでフルームから50秒近く遅れ、しばらくはトップ10にも顔を出さなかったが、山岳ステージでライバルが1人また1人と脱落していくなか最後まで集団に残っていたことが躍進につながった。いつメッキが剥がれてもおかしくないという気持ちで観続けていたのだが、最後の山岳ステージではフルーム、バルデ、ランダら総合上位勢と争う姿をみて、これはサプライズでもなんでもなく実力なんだと納得させられた。最後のTTではフルームから25秒遅れと好タイムでゴール。今年国内TTで勝ってるんですよね。それだけに初日TTの遅れが痛かった。

 

3位バルデ

 2年連続表彰台も、順位を1つ落とし2分20秒差で総合3位のバルデ。ポートがいなくなったあとフルーム最大のライバルであった。今年はバルデ個人というよりチーム力が目立った。ヴュイェルモーズ、バークランツ、マティアスフランク、そしてラトゥール。最終盤でスカイトレインに対してAG2Rトレインで挑むシーンは胸が熱くなった。まぁダメージを与えられなかったんだけどね。チーム力ではスカイに次ぐ強さだった。事実、チーム上位3人のタイムを合計したチーム総合ではトップのスカイからわずか7分差の2位だった。ちなみに昨年まで2年連続でこの賞をとっていたモヴィスターは今年6位と沈んだ。ダブルエースが……。

 バルデ個人でいうと、タイム差<TTのタイム差となっている。山で奮闘してもTTの借金があまりに大きすぎた。最後のTTはバッドデイだったので考えないにしても、体調万全の初日14kmのTTでも40秒離されている。山で40秒取り返すのにどれだけかかることか。TT能力の強化が必須だろう。今年はフランス贔屓が目立ったツール。来年はもしかしたらTTなくなっているかもね……。

 

4位ランダ

 4位は3位からわずか1秒差でランダが入った。スカイ最後の牙城。この人の順位を超えなければ勝負できない。アシストの仕事をしたうえでこの順位だからね。最後の最後まで振り切らないというか、余裕を持った走りだった。いったいフルで走ったらどうなるのだろうか…そんな底知れぬポテンシャルを感じた選手でした。

 ランダのすぐ下がアルというのも面白い。ジロを思い出す。アシストとしてジロに出場したとき、彼はエースのアルを支えながらも絶好調。コンタドール優勢のまま16ステージ、コンタドールのメカトラにつけ込んだアスタナだったが(アスタナはいつもこんな感じ)、アルの足が止まり、後ろには鬼神のようなコンタドールが迫る。自分が飛び出せばタイム差は維持できそう。自分かアシストか。この時ランダは監督命令に従いアシストに徹した。こうして結果的に自分もアルも沈むことになった。この持て余してる感が今年のランダにもみられ、フルームとの不仲説も取り沙汰された。もうエースになるしかないね。

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5位ファビオ・アル

  5位約3分遅れでアル。今年マイヨジョーヌを着用したのはたったの3人。Gトーマス、フルーム、そしてアル。ウランもサプライズだったけど、個人的にはこっちのほうがサプライズだった。昨年のツールではジロ連戦のニバリにすら置いていかれ、今年は地元スタートのジロを膝の故障でスキップ。どうにも苦しんでいるなーという感じであった。それが今年、最初の山岳ステージでキレのいいアタックを決めていきなりのステージ優勝。その後のステージでも果敢にアタックする姿はみていてスカっとするものがあった。惜しむらくはチームのサポートがライバルたちと比べて少なかったことか。マイヨジョーヌを奪取したステージは激坂フィニッシュだった。一方フルームにそれを奪還されたステージは緩斜面フィニッシュだった。2人の登坂速度(個の力)はほぼ同じだったが、チームメイトのアシストで集団前方にいたフルームが勝者となった。ハイスピードとカーブの多さで集団が分断するなか、アルはただ1人で集団に食らいついていた。激坂を個の勝負とするなら緩斜面はチーム力の勝負であり、アルはそれに負けた。長い登りが続く最終盤のステージではアタックどころかついていくことすら困難になり、表彰台からも転げ落ちた。

 

他印象的だった人たち

リッチー・ポート

 実力を発揮する前に落車でリタイア。フルームとの一騎打ちを期待していただけにかなり残念。ただ落車がなかったとしてもアシスト面では大きく遅れをとっていたことは間違いない。ポートはいつもグランツールとなると問題起きるなぁ。来年はただ完走を祈る。

ダン・マーティン

 チーム事情的に孤軍奮闘になりがちでありながら積極果敢にアタックする選手で好きな選手の1人。総合勢で最初にアタックするのは大体この人。今年はかなり際どいところまで争いに残っていた印象。16ステージの横風区間にハマってしまったのが痛かった。

キンタナ

なんとトップ10にも入れず。ジロからの連戦とはいえ予想以下。勝負の土俵にも立てなかった印象。バルベルデのこともあり、モヴィスターは終始空気。ジロも2位だったし来年こそはツール1本で?

コンタドール

ラストツールはギリギリトップ10という成績だった。この順位にいる大体の選手はただついていってるだけってのが多いけれど、彼の場合は逃げたり横風区間で最初に仕掛けたり、戦略家としての存在感は順位以上。普通5分も差がつくとまぁ優勝は無理だなと思うけど、この人に限ってはありえるかも…となる。

バルギル

山岳賞&ステージ2勝、総合もちゃっかり10位。キッテルがリタイアするきっかけとなった落車に巻き込まれながら、終盤には前方にいるというおかしなことをしてた。ツール通して最も目立った選手であり、スーパー敢闘賞にふさわしい選手だった。ただもう十分祝福されてるのだからスーパー敢闘賞くらいデヘントにあげても…という声多数。

新城

 選手名簿をみると新城は超ベテランの域に達してるんだよね。出場回数も完走数も上から数番目ってくらいに。今年は初日にエースを失い、仕事するのはスプリントステージだけって感じでステージ優勝に大きな期待がかかったけど……。

 

 

 終わってみると今年もスカイが強かったってなる。Gトーマスがリタイアしなければスカイ表彰台独占もありえた。対抗するには1チームでは無理だ。