GOD_SPEED_YOU

ゲームの感想など

楽天イーグルスの2019シーズンを振り返る(総合)

 もう2020年だけど、楽天イーグルス2019シーズンを振り返ろうという記事。長くなったので3分割しました。

 

去年↓

godspeedyou.hatenablog.com

 

楽天イーグルスの2019シーズンを振り返る(総合)(この記事 )

 

2019シーズンを振り返る(投手編) - GOD_SPEED_YOU

 

2019シーズンを振り返る(野手編) - GOD_SPEED_YOU

 

 

最終成績:3位 71勝68負4分(.511)

 

今年のチームカラー

 今年は「打」のチームでした。野手は規定到達が6人もいました。特に新加入の浅村、ブラッシュ2人の活躍は目覚ましく、得点は去年より100以上も増えました。しかし1位のライオンズとはまだ100以上の差があります……。「投」では、則本岸の離脱が大きく先発のやりくりに大変苦労しました。規定到達は美馬ただ1人だけ。一方リリーフは相変わらず盤石でブルペンの中でのローテーションもうまくいっていたと思います。

 

今年のパリーグ

 今年のパリーグは最後まで接戦でした。首位に立つこともありましたが、順位表に目を向けるとわずか数ゲーム差で最下位なんて状態が長く続いて気が休まることがなかったです。まあ前半戦の終わり間際に大失速して優勝の目は早々に消えてしまいましたが、落ち切らないところが今年は良かったですね。則本岸の復活もあって後半戦はなんとか粘って勝率5割をキープ。残り2試合残してギリギリ3位に滑り込めたって感じですかね(平石リスペクト)。

 CSではホークス相手に1勝2敗で敗退するも、スコア的には予想以上の善戦でした。レギュラーシーズン終了直後は劇的な順位決定と前年最下位から3位へのジャンプアップということもあって万々歳って気持ちでしたけど、CS終わってみるともっとできたのかもなぁという思いが残りました。ホークスがそのまま無敗で日本一まで駆け抜けたのを見るとなおさらです。

 

打高トレンド

 セパともに去年と同じく打高でした。ライオンズの連覇はその象徴ともいえます。とりわけ先発崩壊が各球団とも顕著で、パリーグの規定到達者は過去最少の6人。しかもそのうち3人は規定の143イニングにギリギリ届いた程度。打者のレベルが上がっているのは間違いないでしょう。

 

ショートスターターについて

 そんな先発不足の野球界で台頭しつつあるのが、ショートスターター、オープナーという新戦術(起用法)です。

 

  ショートスターターとは、メジャーにおいて編み出された新たな投手起用法で、1巡目の対戦が終わる3イニングくらいで先発を下ろすというものです。投手の防御率は巡目を重ねるたびに悪化していくというデータが裏付けになっています。いわゆる「目が慣れる」というのが日米問わず統計でハッキリと示されているのです。

 また試合開始直後の失点率が高いというのと、強打者がそろっている1~3番を確実につぶすために最初の1~2イニングだけ特に強力なリリーフを投げさせることをオープナーといいます。ショートスターターとの違いは、後につなぐのがそのまま本来の先発だということです。そういう意味では先発ではない人へと繋ぐショートスターターはブルペンデーと変わりないですね。日本で率先して導入したファイターズもオープナーというよりショートスターターだったと思います。イーグルスも辛島先発で試用しました。

 オープナーがうまくハマれば1~3番が下位打線のような扱いになって対戦は減るし、勝ちがつく5回までも短いし、本来の先発からするとおいしい展開となります。逆にオープナーを担当する投手からすると強力な打者を相手したのに、結果として残るのは負けがつきやすい普通の中継ぎの記録ですから、心情的にも査定的にもつらいポジションです。

 

 打高時代を象徴するショートスターターですが、新戦術!!と大騒ぎするほど日本で理解は広まりませんでした。率先して導入したファイターズが下位に沈んだのもそうですが、先発不足を埋める策という面だけが強調されていたからです。ショートスターター、オープナーの肝は巡目意識です。巡目を意識することで微妙な投手が、まあまあな投手になるという起用法です。先発がそろっていても、より良い記録が残せる投手起用があればそちらを選択すべきです。

 根底をしっかりと理解していた球団はブルペンデーをうまく活用していました。勝ち継投の間隔が空いてしまったときに、どうでもいい試合で調整登板させるよりかはブルペンデーをつくったほうが勝ちやすくなります。

 

監督について 

 最下位チームを1年でAクラスに引き上げての解任は驚きでした。戦力は十分にあったのだから3位は当然どころかもっとできただろう、というのが球団の評価でした。石井GMが発表した退任経緯の文章を要約すると、平石監督はチームの課題を克服するのに不適格だから切ったというものでした。そのチームの課題とはバントスクイズ走塁面のことだと指摘しています。

 

 今年のチームは出塁率がグンと伸びた割に盗塁が減っていて犠打が微増という結果になっていました。もう少し注目すると、犠打成功率はリーグで下から2番目、盗塁数はリーグワーストタイ、成功率.554はダントツのワースト、二塁ランナーがホームで刺された数もワースト。……このように小技・走塁面でミスが目立っていました。 ファンの主観だと、盗塁はまずアウト、走塁死が多く、下手なバントが多いというのは毎年のことで今さら深刻には思いませんでした。しかし、優勝を狙える戦力がそろってきていよいよ喫緊の課題になってきたように思います。

 

 この惨事をシーズン中に多少なりとも修正の兆しがあれば良かったのですが、それもかなわず、おそらくそれも監督解任の理由でしょう。たとえばバントが有効な場面であっても、バントの下手な選手や打撃能力の高い選手にやらせるのは不合理ですし、盗塁判断にしてもツーアウトだからといって無謀なチャレンジに出る必要はないのです。無駄なアウトの積み重ねが、特に後半戦に入って打線の調子が落ち着いてから顕著だったと思います。

 

 この采配のまずいところを修正するのは当然として、バントが下手とか走塁ミスが多いというのはキャンプの時点から徹底的に練習をしなければなりません。三木新監督に期待するのはそこだけです。

 

GMについて

 石井GMですが……期待をはるかに上回る働きぶりでした。なんといっても浅村の獲得。これだけで100点です。金に勝るものはないにしても、多少のコネがあったのは間違いないと思います。今オフ結婚した浅村の嫁さんも東北や楽天に縁があったようで、そういったのも追い風になったんでしょうね。外国人も大当たりで戦力補充の面では言うことなしです。

 

 トレードも積極的で、石井GMになってから4件の選手トレードがありました。

福井ー菊池

濱矢ー熊原

三好ー下水流

和田ー古川

 トレードは多ければいいというわけではなく、その選手が活躍して初めて良いトレードだった、良い動きだったと評価できます。そういった意味で福井の獲得は成功だったと言えるでしょう。出ていった菊池が広島で中継ぎ転向して58登板2点台のスーパーマン化したのと比べると控えめな活躍ですが、ほぼ戦力外だった2人がここまで戦力になったのですから、意味があったし、選手にとっても良いトレードでした。三好下水流のトレードもチームにWINというより選手にWINのトレードでした。三好はこのブログでもレギュラーの力はあると再三訴えていたわけで、いなくなったのは寂しいですが、プロ野球ファンとしては喜ばしいことです。最も驚いたのは古川と和田のトレードです。前年17先発もしたチーム4番目のイニングイーターを放出したのです。和田は前年(2018)二軍で本塁打と打点の二冠王だった期待の若手とはいえ、なかなか思い切ったトレードで数年後が楽しみです。和田は今年プロに入って初めて100打席立ちました。プロ初本塁打も放ちましたし悪くないスタートでした。

 

 トレードに関してはジャンクスポーツの密着VTRでも狙いをつけた選手をいくらかリストアップするなど積極的な姿勢を見せていました。来年以降も頻繁にあるでしょう。そして三好古川のような(チーム的には)ビッグネームの行き交いもあるでしょう。

 

 石井GMは補強以外にも即応性というか、何か出来事があるたびにコメントを発表してくれるのも嬉しいです。GM職を設置するまではどこか合議制的というか、ベストではなくベターな選択をしました、的な印象を補強があるたび感じました。石井GM1人が発表することで彼が彼の哲学でチーム作りをしているという姿勢が伝わってきます。

 

 シーズン中に契約更改というのもありましたね。則本と7年契約。メジャー志向もないようですし、FA権を行使しての残留。実質一生楽天宣言です。リハビリ中に話をまとめたそうです。シーズン後の則本自身の話によると、精神的に参っていたこともあり、球団の訴えに心が打たれたんだそうです。つけこむというと言い方が悪いですが、とても良いタイミングだったと思います。

 

 そしてGM職を設置した最大の理由は、非情な首切り宣言を任せることです。監督もそうですし、嶋というチームの象徴を放出するというのは、なあなあな関係では無理です。まったくの外部の人間で、しかも選手としてレジェンド級の実績を持つ石井GMにしかできないことです。彼に業をすべて背負わせることで、ファンからの苦言からチームの名誉を守ることができます。アイツがすべて悪いんだって言えますからね。責任の明確化、あるいはスケープゴート。ありがたい存在です。

 

 こうした手腕に対して批判的な声もあります。知名度のために白い目で見られがちなだけで、個人的には特に際立って悪辣という感じはしません。むしろ地元出身の選手を獲得したり、トレードで出番のない選手を放出したり、契約更改でも大盤振る舞いだったりで、温情的なほうだと思います。

 

感想

 予想以上に戦えるチームになっていて、ファンといえども若干ひいた、っていうのが正直な感想です。去年最下位であれもだめこれでもだめと散々な内容だったのに、GMが「3位は最低だった」と言えるほどになるなんてどんなサプライズでしょう?今年(2019)は去年との比較でなんでも楽しめたシーズンでした。

 

 これまでのAクラス入りは「奇跡」とか「快進撃」という言葉とともに語られることが多かったように思います。今年は全員がほぼ期待通りの活躍をして、戦力通りの順位になりました。奇跡感より納得感がある点で特殊です。もちろんブラッシュや石橋といった予想以上の活躍をしてくれた選手もいます。しかしトータルでみた場合、Wエースの離脱などもあったわけですから、大きな上振れはあまりなかったと思います。これがどういう意味かというと、すでに上位に食い込める基礎戦力が整っているのは間違いないということです。多少上振れしようものならば優勝だって夢ではない……。そんな希望を抱かせてくれた素晴らしいシーズンでした。

 

godspeedyou.hatenablog.com

godspeedyou.hatenablog.com