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ゲームの感想など

楽天イーグルスの2020シーズンを振り返る

Aクラスすら逃すとはね……。開幕前にCSやらなんやらの日程がきついみたいなこといってたのが恥ずかしい。 

 

開幕前の記事

godspeedyou.hatenablog.com

 

 

最終成績

55勝57敗8分(勝率.491) 4位

 

 

 

【今年の注目点】三木監督の采配

 今年最大の注目点は三木新監督の采配でした。3位で、しかも長年チームに仕えてきた平石監督を切ってまで就任させた監督です。チームの長年の課題である小技走塁面が改善できれば、さらなる補強もしたし普通にやれば2位以上は堅いだろう。そういう見通しだったと思います。

 

【風物詩】スタートダッシュ成功

 涌井以外の先発は不安定でしたが、浅村や新戦力の鈴木大地を中心に打線が元気で、殴り勝つ野球だったと思います。選手の起用は全体的に無難。事実として首位を走ってましたから、ああやはり三木監督は名将なのかもしれないと思ったものでした。

 

【変調】7月のある週

 そんな好調なチームが落ち目に転じたのはなぜか。もっとも印象に残っているのが7月21~26日のオリックスをホームに迎えての6連戦です。開幕が6月中旬くらいでしたから、まだ開幕から1カ月くらいの時です。6連戦直前まで楽天は首位でオリックスは最下位でした。下位相手に絶対に取りこぼしたくないカードで、結果は1勝4敗1分と負け越し。長いシーズンこういう週もあるでしょう。ただ内容がひどすぎました。抑え森原が2度の炎上、エース(?)則本も炎上、主砲ブラッシュの負傷……。この次のカードでも打たれた森原は2軍へ、則本はピリっとしない投球が最後まで続き、ブラッシュは調子が二度と戻らず8月上旬にも永久離脱……。たった1週間でチームを支えていたエース、抑え、主砲の3人がそろって調子を落とす、しかも2人は離脱という大きな傷痕を残した1週間だったのです。

 

【中継ぎ崩壊】早すぎる森原の離脱

 特に痛かったのが抑え森原の離脱でした。今年はハーマンの退団、松井の先発転向と、計算できる勝ち継投が2枚減った状態でのスタートでした。しかもこの2人は並みではなく、緊迫した場面が多い110イニングを防御率2点台前半で抑えていた化け物コンビでした。新戦力のうち、この2人に並ぶ安定感があったのは牧田くらいで、あとは終盤任せるにはややしんどいレベルでした。昨シーズン活躍した宋や青山の調子は上がらず、高梨はトレード……。例の1週間の前から中継ぎ陣はかなりギリギリのところにいたのです。そこにきて去年60イニングで今年抑え初挑戦の森原の離脱というのは大打撃でした。しかもこれがシーズンのかなり早い段階に、そして過密日程ゆえ一度離脱すると失う試合数もとても多い特殊なシーズンで起きてしまったのです。

 

マシンガン継投

 シンプルに継投の枚数が少ないのに加えて、にわかに問題化していたのがマシンガン継投でした。三木監督と伊藤投手コーチのどちらが継投判断をしていたかはわかりませんが、悪い意味で目立ってました。

 

 そもそも今シーズンはコロナ禍による開幕の遅れを補完する過密日程のため投手野手問わず負担がかかるシーズンで例年以上に慎重な運用が求められるシーズンだったはずです。そのために一軍登録人数も例年より2人多く、外国人も1人多く使えるという特殊なルールが敷かれていました。それにもかかわらず投手を疲弊させるワンポイント継投は不可解としか言いようがなかったです。そもそも高梨を放出したのもワンポイント投手が価値を下げるだろうという思惑があってのことなのに、現場はワンポイント重視で、まさにあべこべでした。

 

 いよいよ継投が苦しくなったシーズン終盤は松井を先発から後ろに戻すことに。これはまだわかりますが、先発登板後の次の週からいきなり緊迫した場面、それも3連投させるという無茶。抑えた松井はすごかったですが、酷使がひどかった今年の象徴的ともいえる采配でした。

 

そもそも先発

 後ろが信頼できないのは痛い。ただそれ以上にそもそも先発からして終わっていました。信頼できたのは涌井だけで、基本試合をつくれない。5回投げれば上々といった感じで、正直イニングを稼げない松井といえども戦力になりました。則本岸はもうフルシーズンの活躍は無理かな……。則本はスタイルチェンジと称し丁寧な投球を心掛けていたようでしたが、いかんせん踏ん張りがなさすぎた。岸は終盤大活躍で月間MVPもとりましたが本当そこだけ。他にも塩見、石橋、弓削らへんの去年そこそこ良かった彼らがボロボロだったのが痛かったです。特に塩見は2年ぶりの16登板を果たし、チーム3番目のイニングイーターでしたが、防御率は4点台後半でQS率もチーム平均を下回る4割を切る数字。「離脱は多いがそこそこいい投球をする」例年と対比的に「離脱しないでダメダメな投球をする」年でした。終盤ルーキーの瀧中が来季に期待を抱かせる安定した投球をみせてくれたのは良かったです。ただ全体的に軸となりそうな先発は涌井以外にいなかったというのが現実でした。

 

三木監督とは

 三木監督は戦術や育成の面では確かに優れた指導者だと思います。走塁ミスも減ったし、策を講じるタイミングも抜群でした。ただ精神面でこれほど脆さをみせるとは思いませんでした。表情や態度に思いっきり出るタイプで、劇的な試合で涙した場面もありました。これは歓喜の涙というより、安堵の涙で、その裏にあるのは個人的に追い詰められた感情で、チームのための涙ではなかったように思います。人間らしいとは思いますが、規律を守らせるリーダーがとるべき態度ではなかったと思います。むしろ厳しいときだからこそ規律を守るよう喝を入れるリーダーでいて欲しかった。CSを逃した最後の試合なんかはもう泣きそうな顔で、なんというか、「もう休んで……」と言いたくなるような光景でした。新しい戦力が次々と生まれ、ミスもそれほど多くない優れた指導者というのは間違いなく、無能ではない。ただモチベーター的要素は皆無で、これは彼の能力を超えたところにあるように思いました。まんま平石前監督と鏡のような存在で、足りないところを補おうとしたら、足りないところが現れたという感じ。

 

 Aクラス入りした生え抜きの平石監督をクビにするほど問題視していたチームの走塁、小技面の改善は、まだ道半ばという感じがします。走塁の面ではひとまず「暴走」しなくなったことがとても大きい。無理をしない勇気はとても大事。キャンプで重視していた進塁打の徹底は、面白いことに結果を残している人は実行できてて、そうでない人たちはそれすらもできていなかった。「転がせ!」なんて簡単に言われても「そもそも当たんねーよ」って感じでしょうかね。結局、采配も育成もなにも、できるやつはできる、できないやつはできないという非情な実力主義の世界だったと。

 

 盗塁は小深田辰巳の2人が2ケタ到達も、どちらも成功率が7割以下で、う~ん。足の速いイメージは他チームに植え付けられたかな。意外にも島内が10-9成功という好成績で驚いた。島内が盗塁を決めまくるくらいだから、他の選手はもっとしているに違いないと思っていたくらい。

 

GMについて

 まず補強の面では、鈴木大地、涌井、牧田の獲得は大成功でした。ドラフトも小深田をはじめ津留崎、瀧中と初年度から活躍する選手を見抜いたことも見事です。ハーマンの穴を埋めるべく獲得したシャギワは外れでしたがこれは仕方ないかと。ただ外国人野手をもう1人取るべきでした。

 

 今年の事件といったらやはり笑ってしまうほど裏目ったあのトレードでしょう。高梨はワンポイントでなくても十分通用し、もし残っていたら森原の穴を十分に埋められるほどの成績を残していたでしょう。ウィーラーは活躍の機会をあげたいと軽い気持ちで放出したら、ブラッシュの長期離脱で喉から手がでるほど欲しい存在になってしまいました。元選手の立場から飼い殺しはしたくないという思いが強いのは良くわかりましたが、引き換えに予備戦力を失うという当たり前の代償を支払ったという印象です。

 

 マシンガン継投の項目でも触れましたが、高梨がトレードに出された背景には、MLBでのワンポイント禁止(登板したら3人には絶対に投げなければならない)が日本にも持ち込まれる可能性が高いから、ワンポイント起用の多い高梨は価値を落とす……という計算があったからだと思います。それに適応するため、投手起用は1イニングが基本となるだろう……と思っていたら、三木采配はワンポイントに次ぐワンポイント祭り。三木監督の精神面でのケアも含めて現場との距離が感じられました。

 

 ただ最後にドラ1で今年ナンバーワン投手のクジを当てちゃうところがこの人のすごいところ。

 

 4位という結果からして、チーム作りのトップとして責任は免れません。とはいえ、三木監督の抜擢やトレードのド派手な失敗ばかりが取り上げられがちですが、ドラフトや補強の面ではとてもうまくやっていることもまた事実。今年の失敗を糧に来年も頑張って欲しいです。

 

※なんと来季は監督に。これはよくないですね。監督って罰ゲーム? これにGOサインだした球団もおかしい。GMの仕事の失敗はGMの仕事で返すべきだと思うんですが……。トレード好きで選手を切るのが早いGMと同じベンチで野球をするのって選手からしたらしんどそう。 良い点をあげるとすれば、運用面では間違いはしなさそう。あと海を渡ってるし近年の野球事情に明るそうなところ。奇抜な策を取りそうなワクワク感はある。あとはメンタルがどうか。

 

総評

 とにかく投壊、特に中継ぎ。早々に勝ちパターンが崩壊したのと、マシンガンもあってボロボロのボロ。 今年は逆転負けが12球団ワーストの32試合もあったそうです。後ろが弱かったのもですが、中盤で逆転されることも多かったように思います。早々に先発が焦げ臭くなったので替えたら、勝ちパターンに届く前に逆転されるというパターン。シーズン中、勝ちパターンとして信頼できそうなのがせいぜい2人くらいのときが多く、そうなると8回までは不安定な継投が続くことになります。先発が早めにヘタる→勝ちパターンまで遠い→勝ちパターンも不安定と、まあ本当に、投壊でした。

 

 にもかかわらず5割近辺で踏ん張ることができたのは、涌井の存在も大きいですが、やはり打線の強さでしょう。打てない試合や大勝もたくさんありましたが、12球団トップの557得点はマグレにしてもなかなかの数字です。平均得点4.64点。試合数少なかったとはいえ球団史上最高のはずです。しかもシーズンの早い時期にブラッシュが抜けての数字ですから尚更。そのわりにはあまり注目されなかったのは、順位の問題もありますが、劇的な試合が少なかったこともあると思います。サヨナラは三木監督も号泣した茂木のサヨナラホームランの1試合のみ。なーんか点は取れてるんだけど、いいところで打ってくれないという打線でした。

 

 ツイてないシーズン……だったんですかね。いやそう思おう。

 

個人的殊勲賞

あくまで個人的。

 

新人王:小深田

 何で社会人出身の守備固めを1位で取ってんだ?と思ったものでしたが、いやはや素晴らしかった。チーム状況的にも的確な補強でしたね。1番良かったのは何より初年度から、しかも過密日程の中でレギュラーで出場し続けたこと。112/120試合ですよ。1番いい選手はやっぱり試合に出続ける選手。第2は守備よりも打撃。ここがね予想外だった。ルーキーでヒット100本超え打率.288というのは、賢さより才能の域だと思う。プロの球と配球にもうついていってる。適応度でいうと茂木以来の衝撃。

先発:涌井

 ほぼ戦力外で、気をつかっての金銭トレードという形をとった大ベテラン。まさかの最多勝。コヤシン(シンカー)1つでこんなにも変わるものか。この人がいなかったら冗談抜きで最下位だったでしょうね。チームで1番投げて1番勝つというね。エースじゃん。水曜日は至福の日々でした。

中継ぎ:ブセニッツ

 過密日程かつマシンガンという状況の中で、本当によく踏ん張った!CSを逃した最後の試合は浅村が打てず、ブセニッツが打たれての負けでしたが、この人たちがダメなら仕方ないかなという納得いく終わり方でした。成績的には牧田のほうが上ですが、印象的にはブセニッツのほうがしんどい場面での登板が多かったような気がします。

野手:鈴木大地

 成績的には浅村が1番だけど、個人的に称えたいのが鈴木大地。本当にいい選手。首位打者を狙えるんじゃないかというくらい打ちまくってました。終盤調子を落としたものの、リードオフマンとして十分すぎる成績。この人を取り上げたのは、ブセニッツと同じように数字以上の貢献が大きかったから。なんといっても走塁。このチームのクロスプレーは本当嫌な感じしかしないものだけど、この人がランナーだと逆に楽しみになる。そして打つほうではランナーいなければ出塁、いれば進塁打。三木野球のお手本というべき存在でした。人間性の面でも打席はいる前の一礼するところや、守備で投手に声をかけるところなど、なにからなにまでがお手本でした。

 

最後に今年の良いニュース!

・小深田が過密日程のなかでレギュラーとして十分な活躍

・投手では津留崎、瀧中が順調なスタート

・日本一功労者の岡島の復活

・新人王田中和基の復活

・サブちゃんこと福山の復活

・涌井の復活しかも最多勝

・浅村は今年も大暴れ本塁打王

・ドラフトで今年最高の投手早川を4球団競合のクジで引き当てる