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ゲームの感想など

ドラマ『ハンニバル』の感想

ドラマ感想

 深淵をのぞくとき深淵もまたこちらをのぞいているのだ

 

ハンニバルシリーズ

 -公開順、観る順番

・ドラマ版の概要

 -アダルト描写とグロ描写

 -ストーリーとキャラクター

・感想

 -ピークエンドの法則

 -ダークヒーロー

 -PVハンニバル

 -お気に入りキャラ

 -まとめ

 

 

ハンニバルシリーズ

 名作シリーズのドラマ版。ハンニバル・レクターを中心に話が回っていくので、ハンニバルシリーズとも呼ばれますね。原作はトマス・ハリスの小説で、それを映画化した『羊たちの沈黙』が大ブレイクしました。時系列は以下。

 

小説(発売順)

レッド・ドラゴン(1981)

羊たちの沈黙(1988)

ハンニバル(1999)

ハンニバル・ライジング(2006)

 

映画(公開順)

刑事グラハム/凍りついた欲望(旧レッド・ドラゴン)(1986)

羊たちの沈黙(1991)

ハンニバル(2001)

レッド・ドラゴン(2002)

ハンニバル・ライジング(2007)

【ドラマ】ハンニバル(2013-2015)

  最も有名なのが『羊たちの沈黙』。この大ヒットを受けて前作の『刑事グラハム~』は、『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』に改題され再発売されました。しかし、一般に「ハンニバル・レクター」といえば『羊たちの沈黙』以降のアンソニー・ホプキンスが想起されるため、第一作なのにパチモンのような扱いを受けがちです。

 小説と映画の公開年をみてもらえればわかるように、『羊たちの沈黙』以降の作品は、小説発表の翌年には映画化されています。それだけ人気があるシリーズなのです。今また発表されたら、日本語読者が小説を読む間もなく映画が公開されるでしょうね。

 

作品世界の時系列

ハンニバル・ライジング

レッド・ドラゴン(旧・新・ドラマ版)

羊たちの沈黙

ハンニバル

  『ハンニバル・ライジング』は、ハンニバル・レクターの生い立ちを描いたもの。いかにして食人鬼は生まれたのかが描かれる。

 『レッド・ドラゴン』は、ハンニバル・レクターとウィル・グレアムの因縁を描いたもの。ドラマ版はこれを基にしている。

 『羊たちの沈黙』は、ハンニバル・レクタークラリススターリングの因縁を描いたもので、『ハンニバル』はその続編。

  小説と映画で異なる点はいくつもあるが、ここでは書かない。

 

観る順番

 ドラマはシリーズ初見でも楽しめますが、過去作を知っていると、また別の楽しみ方ができます。初見のドキドキと、常連ファンのニヤニヤのどちらを選ぶかは自由です。

 シリーズを制覇したいと思ったなら、続編である映画『ハンニバル』以外は、どこから観ても大丈夫です。まあ普通に公開順に観るのが一番です。

 

 

ドラマ版の概要

 2013年4月からシーズン1が始まり、シーズン3まで放映されました。各話50分弱くらいで各シーズンごとに13話、つまり全39話です。

 続編の可能性は無きにもあらずですが、一応今のところは打ち切りという名の終結扱いです。製作総指揮者曰く、打ち切りの原因には違法ダウンロードの影響もあるそうです。

製作総指揮を務めたマーサ・デ・ラウレンティスは、米The Hill紙にあてた文書で番組終了の理由を打ち明けている。「NBCが『ハンニバル』をシーズン4へ更新しないことを決めたのは、2013年に不正ダウンロード数ランキングで本作が5位になってしまったことも少なからず影響しています。放送翌日には正規の方法でダウンロードすることができたにもかかわらず、ハンニバル』の視聴者の3分の1に近い人々が海賊版サイトで見ていたのです。番組がこのような形で盗まれてしまうと、クルーに対して公平に支払って製作を続けていくことが、不可能でなくても難しくなってしまいます」とそこには記されていたという。

ニュース:『ハンニバル』打ち切りの理由は不正ダウンロード? | 海外ドラマNAVI

 視聴者が離れていったわけではないのに、打ち切りというのは悲しいですね。

 

 『レッド・ドラゴン』を原作としたドラマ版は、原作ではあっさりしていたハンニバル・レクターとウィル・グレアムの前日譚に大きく尺がとられています。「あっさり」というかそもそも書かれていないことなので、ほぼオリジナルといっていいでしょう。実際に「レッド・ドラゴン」との話が始まるのはシーズン3の中盤からで、物語の主軸はハンニバルとウィルの駆け引きです。

 ほぼオリジナル、しかも時代背景も違うということなので、原作や映画とは細かい整合性が取れていません。大まかには原作に沿っているんですけどね。ちなみに、『レッド・ドラゴン』ということは、『ハンニバル・ライジング』を終えているということです。

 

 アダルト描写とグロ描写

 殺人犯を描くドラマなので、グロテスクな描写は当然あります。普通に人間食ってますからね。食ってるってことは調理してるってことで、調理してるってことは刻んでるってことで、刻んでるってことは捕まえてるってわけで…捕まえてるってことは…。まず食人鬼を描いている時点で、倫理的についていけない人もいるでしょう。ただ残酷な描写がマターな作品ではないことは強調しておきたいです。

 エロはね、普通かな。ヤッてるシーンなんか、海外ドラマじゃよくあることだしね。日常の一部として描いているものであって、いやらしさとかはありません。ただ「ある」ことは確かなので、潔癖症の人は気にするかもしれません。

  また、同じように観る際の注意として、比喩描写が多く登場することが挙げられます。ウィルは不安定になってくると夢や幻視を多くみるようになります。いかに状況が悪化しているかを知るバロメーターとして比喩が用いられるのです。同じ映像が繰り返し登場するので、これらを理解していないと変化を楽しめません。比喩のキーは序盤に多く散りばめられているので、序盤は特に集中してみる必要があるでしょう。なんでもないやり取りのなかに重要なワードが登場することもあるので、息をつく暇がありません。そういう意味で、「ながら見」ができないドラマだといえます。

 

キャラクターとストーリー

 ウィル・グレアムはプロファイリングに優れたFBIアカデミーの教官で、人一倍強い共感力を持っています。この共感力がドラマ版では誇張されていて、なかば特殊能力のように描かれています。それがあまりに強力すぎるがゆえに諸刃の剣になっています。常人には理解不能な異常者の犯行動機を理解でき、迅速な捜査が可能になる一方、サイコパスに共感することによって彼らに取り込まれてしまう危険性があります。ウィルは、その特性の危険性や、自閉症気味で不安定な精神を理由に、本来望んでいたFBI捜査官には不適格と判断され、アカデミーの教官という地位に落ち着いたのでした。

 捜査官として不適格だと判断したのは、FBI行動分析課長のジャック・クロフォード。彼もシリーズお馴染みのキャラクターですね。彼はウィルの資質はともかく、プロファイリングの腕自体は認めており、事件解決の手助けをウィルに求めます。当然、この直前に捜査官試験を落とされたわけなので、ウィルとしては気分は良くない。しかし、ウィルの共感力は被害者にも発揮されるわけで、「被害者のため」と言われると断り切れないのです。とはいってもウィルは不安定な人間で、誘おうとしているのは殺人者の中でも特に闇の深いサイコパスを相手取る職場です。クロフォードは、ウィルが殺人鬼に囚われないように定期的に精神科に罹るように命じるます。ただ、ここに誤算が生じました。それはウィルの担当医がハンニバル・レクターだったことです。

 ハンニバル・レクターは、高名な精神科医で美食家という顔と、人を食べる猟奇殺人犯という2つの顔を持っています。ただでさえ不安定のウィルは、ジャックへの捜査協力のせいで神経をすり減らされ、ハンニバルへの依存度を高めていくことになります。ハンニバルはそれにつけ込み、自分好みの人間への再構成を試みます。このドラマの最大の焦点は、ウィルがハンニバルの手に落ちるかどうか(もしくは落ちたか)です。

 

 ストーリーは複数話完結の刑事物のような構成になっています。特別な能力と個性を持ったキャラクター(ウィルとハンニバル)が、難事件を次々と解決していき、その間にそれぞれの人間ドラマが展開される、というありがちな構成です。扱う案件は、いわゆるサイコパスによる異常殺人が主です。死体を積み上げてみたり、皮をはいでみたり、人間できのこ栽培してみたり、一目みて異常な殺人だとわかる現場ばかり。ひねくりすぎて逆にグロさが薄らいでいます。もはやアートの域。映像作品として1つの見せ場にもなっています。

 

 

 

感想

 ピークエンドの法則というものがあります。これは自分自身の経験の記憶を、その経験の絶頂期と終了期の印象によって判断する傾向があることをいいます。「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、人は99回嫌なことがあっても、1回ものすごくいいことがあれば、よかった記憶として覚えているものです。その法則のとおり、『ハンニバル』は、盛り上がるところは盛り上がったし、終わり方も良かったしで、私の記憶の中ではとてもいいです。しかし、それはあくまで絶頂期と終了期の記憶から判断したに過ぎず、全39話すべてを楽しめたかと再度問われると、頷きにくいのも事実です。まあでも、良かったッス。

 

ダークヒーロー

 このシリーズは、不安定な人物たちが不安定な事態に陥るパニックドラマ的なところがあります。だからこそ、その中でピクリともしないハンニバルの存在は視聴者的にも心強い。ヒーロー物に似ています。ただ彼の正体は猟奇殺人犯だから、彼を追いかけると深みにハマっていくんですけどね…。結局、作品を吟味しようとすると、なんだかんだ最終的にハンニバルというキャラクターに尽きますね。 

PVハンニバル

 作品を通じて、彼の美学をテーマにしたオシャレなPVをみてるようでした。ハンニバルは美食家で料理上手でもあるので、頻繁に料理シーンが挿し込まれます。肝臓っぽいものを焼いていたり、足っぽいものを切っていたりするのに、それがとてもテンポ良く、そして鮮やかに映されるのです。本来なら残虐な行為なのに…。何かそれが、とても都合のいいものにみえました。嫌悪感があるのは、私が被食者に同情しているからでしょう。しかし、普段の食事で被食者に同情することは滅多にありません。ハンニバルはその不条理を浮き彫りにする鏡のようなキャラクターです。

お気に入りキャラ

 ハンニバル以外のお気に入りキャラクターは、チルトン博士とクロフォードです。チルトンは典型的な生意気やられキャラで、ハンニバルを挑発しまくります。シリーズのファンからすると、そんなこと絶対ご法度じゃないですか。常に銃口を向けられているようなものですからね。だから、彼の言動がいちいちサスペンス的というか、恐ろしいんですよ。意外としぶとくて、学習もしないから、もう怖くて怖くて。クロフォードはシリーズお馴染みのキャラクターで、シリーズイチの良識人といっていいです。良識人だからこそ、ハンニバルのような異常者を理解できない。理解できないだけで、彼は常に正しいんです。彼の予見することは大体当たっているし、彼が良くない判断をしたときには、かなりガッカリします。スポーツチームでいうキャプテンがやらかすみたいな。テメーはしっかりしてろって思っちゃう。捜査官としては有能でも、部下の面倒見はあまり良くないというのが一つのポイントになります。気を遣うけども、そこまで深くはみてやらない的な。そもそもウィルを最初に追い詰めるのが彼ですからね。捜査(仕事)とは関係ないところで苦労しがちなお父さんって感じ。

まとめ

 簡単なドラマじゃないです。

 心理描写に力を入れている分、展開は重い。良く言えば丁寧、悪く言えば冗長。長すぎるツッコミみたいなものかな。やっぱり面白かったのはサスペンス部分でした。特に緊張感が高まるのは殺気が高まっている時です。まぁ殺気がたっててもそうポンポン殺るわけじゃないんだけど、連続殺人犯が背中に立ってたら怖いっす。

 総評するとね、『ライジング』よりは面白い。『ハンニバル』よりもいいかな。ただ、39話で1本の作品とみると、やっぱ長い。この記事みたいに。サクッと楽しみたい人より、じっくり観る考察好きな人向けです。

 




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